建築用シーリング材に施工された仕上塗材の促進汚染性試験方法
建築用シーリング材に施工された仕上塗材の
促進汚染性試験方法について
建築用シーリング材の表面に仕上塗材を施工した場合の,仕上塗材の汚れやすさを評価する試験方法として,日本シーリング材工業会規格・JSIA 003:2011「建築用シーリング材に施工された仕上塗材の促進汚染性試験方法」が平成23年1月26日付で制定された。
はじめに
建築用シーリング材の上に仕上塗材が施工された場合,時間の経過とともに仕上塗材の汚れ,しわ,ふくれ,変色などが生じ,外壁の美観に影響を及ぼすことがある。これは,異種の有機系高分子材料同士が接触した場合に,高分子骨格の内部に取り込まれていない成分が,材料間の濃度差と相溶性の条件により,他方の材料へ移行するために生じる現象である。
具体的には,シーリング材に含まれる可塑剤などの移行しやすい成分が,仕上塗材へ移行して塗膜が変質し,汚れ,しわ,ふくれ,変色などの不具合状況が発生する。この現象は,「にじみ」を意味する英語である「ブリージング(bleeding)」と一般的に呼ばれている。ブリージングによる仕上塗材の汚れの例を写真に示す。
具体的には,シーリング材に含まれる可塑剤などの移行しやすい成分が,仕上塗材へ移行して塗膜が変質し,汚れ,しわ,ふくれ,変色などの不具合状況が発生する。この現象は,「にじみ」を意味する英語である「ブリージング(bleeding)」と一般的に呼ばれている。ブリージングによる仕上塗材の汚れの例を写真に示す。
ブリージングによる仕上塗材の汚れの例
シーリング材による仕上塗材の汚れを屋外暴露以外の方法で短期間に評価する方法としては,塗装した試験体を一定期間加熱した後に汚染材を振りかけ,汚染材の付着状況を評価する方法が広く行われているのが現状であるが,加熱温度,期間,汚染材の種類などはまちまちで標準化されてはいなかった。また,この方法が屋外暴露とどの程度整合しているかについての研究も,これまでは充分ではなかった。
そこで,当工業会は,日本建築仕上材工業会および独立行政法人建築研究所と共同研究を実施し,屋外暴露と整合性のある促進試験方法を共同で研究した。この度この成果基づいて,日本シーリング材工業会の試験方法規格(規格番号:JSIA 003-2011)として制定したので,その経緯と概要について報告する。
そこで,当工業会は,日本建築仕上材工業会および独立行政法人建築研究所と共同研究を実施し,屋外暴露と整合性のある促進試験方法を共同で研究した。この度この成果基づいて,日本シーリング材工業会の試験方法規格(規格番号:JSIA 003-2011)として制定したので,その経緯と概要について報告する。
制定の経緯
日本シーリング材工業会,日本建築仕上材工業会及び独立行政法人建築研究所は,シーリング材と仕上塗材の適合性について,1985年,1995年,2005年の3回にわたり屋外暴露試験を実施し研究成果を公表してきた。
最新の研究では,シーリング材,仕上塗材ともに新しいタイプの市販品による適合性確認が行われ,シーリング材については,近年普及している仕上塗材の汚染が生じにくいポリウレタン系のノンブリードタイプが,仕上塗材については,環境対応形の水系または弱溶剤タイプが試験に供され,屋外暴露1年後の結果は最新のJASS 8に反映されている。
研究の過程で,屋外暴露と整合性のある促進試験方法の標準化が課題として挙げられ,2008年から促進試験条件の検討が開始された。予備試験は,シーリング材4種と仕上塗材2種の組合せで,いずれも屋外暴露と同じ材料を用いて実施された。予備試験で,加熱温度,加熱期間,汚染材の種類を決定し,2009年にシーリング材4種,仕上塗材11種の組合せによる試験を実施した。結果を屋外暴露3年後と比較して表に示す。
全体として,促進試験の結果は屋外暴露の結果と一致しており,一致した組合せの割合は,バリアプライマー無し・バリアプライマー有りのいずれでも,90%以上であった。なお、網掛けで示した部分は,促進と屋外の結果の差が比較的大きかった組合せであるが,これは屋外暴露ではカビ等の要因が汚れに影響したためと考えられる。
以上の結果から,本試験方法は屋外暴露と整合性があることが確認されたため,試験方法として制定するに至った。
最新の研究では,シーリング材,仕上塗材ともに新しいタイプの市販品による適合性確認が行われ,シーリング材については,近年普及している仕上塗材の汚染が生じにくいポリウレタン系のノンブリードタイプが,仕上塗材については,環境対応形の水系または弱溶剤タイプが試験に供され,屋外暴露1年後の結果は最新のJASS 8に反映されている。
研究の過程で,屋外暴露と整合性のある促進試験方法の標準化が課題として挙げられ,2008年から促進試験条件の検討が開始された。予備試験は,シーリング材4種と仕上塗材2種の組合せで,いずれも屋外暴露と同じ材料を用いて実施された。予備試験で,加熱温度,加熱期間,汚染材の種類を決定し,2009年にシーリング材4種,仕上塗材11種の組合せによる試験を実施した。結果を屋外暴露3年後と比較して表に示す。
全体として,促進試験の結果は屋外暴露の結果と一致しており,一致した組合せの割合は,バリアプライマー無し・バリアプライマー有りのいずれでも,90%以上であった。なお、網掛けで示した部分は,促進と屋外の結果の差が比較的大きかった組合せであるが,これは屋外暴露ではカビ等の要因が汚れに影響したためと考えられる。
以上の結果から,本試験方法は屋外暴露と整合性があることが確認されたため,試験方法として制定するに至った。
促進試験と屋外暴露試験の結果の比較
(汚れ無し ○ → △ → × → ×× 著しい汚れ)
(汚れ無し ○ → △ → × → ×× 著しい汚れ)